いのちのことば社
カイロスブックスシリーズ。
77年前「福音宣教」の名の下、フィリピンに派遣され、ある事件に巻き込まれBC級戦犯となった一人の神学生がいた――戦後、自らの罪を問いつつ、平和と和解を発信し続けた中田善秋。その遺した著作や証言から、日本の教会の戦争責任を見つめる。
目次
はじめに
1 中田善秋(なか だ よし あき)とは誰か
出生から応召まで
当時の日本神学校
召 集
2 フィリピンでの活動
宣撫工作班の活動内容
ゲリラ戦
サンパブロ事件
3 フィリピン戦犯裁判
ラグナ収容所とラグナ信友会
戦犯裁判と獄中書簡
証言と判決
4 スガモプリズン
「信友」の発行
戦犯釈放運動
5 釈放後の信仰生活
あとがき
【「カイロスブックス」刊行のことば】
ギリシア語の「カイロス」は、「時」と訳される言葉です。それは、単なる「時間」を指しているのではなく、「決定的な時」、待ち望んでいた「その時」を意味します。特に、新約聖書における「カイロス」とは、「神が目的のうちに定められた時」を意味する重要な言葉として使われています。
「カイロスブックス」は、この日本で、今の「時」を生きるキリスト者として、教会、社会、生活、教育、福祉の現場で起こっている現実を、キリスト教的な世界観・歴史観の視点から問い続けるという目的のもとに刊行されたシリーズです。
環境問題、格差、分断、対立など、私たちを取り巻く状況は、ますます終末の様相を呈してきています。どこに突き進んでいくのか混迷を深めるこの時代にあって、真の光であるキリストを掲げる教会として現代の問題に光をあて、「教会のこと」「社会のこと」ではなく、自らの生活に、教会に、そして生き方までに深く関わってくることとして捉えたいと思っています。キリスト者と社会をつなぐものとして、さらに教会内で考える題材として、このシリーズが用いられることを、願ってやみません。
「カイロス」には、「応答すべき時」という意味もあります。今の「時」に生きる者として、沈黙ではなく、この「カイロス」に応答すべき者でありますようにとの祈りを込め、この「カイロスブックス」を刊行いたします。
著者・訳者など:小塩海平
ISBN:978-4-264-04380-5
小塩海平(こしお・かいへい)
1966年6月23日、静岡県浜北市生まれ。 1995年東京農業大学大学院農学研究科博士後期課程修了、農学博士。現在、東京農業大学国際農業開発学科教授。 日本熱帯農業学会評議員、国際東南アジア農学会編集委員長。日本キリスト教会東京告白教会長老。専門分野は熱帯園芸学、植物生理学。 主著:『花粉症と人類』(岩波新書、2021)、『農学と戦争』(足達太郎、藤原辰史との共著、岩波書店、2019)など。訳書:『ディアコニアとは何か』(ヤープ・ファン・クリンケン著、一麦出版社、2003)などがある。